連載「石垣島の美味しいスパイス パナリ食堂」とは...
かつて渋谷で世界の「辺境」音楽を集めた伝説のレコード店「パリペキンレコーズ」を作り、現在は、石垣島に在住。「辺境」音楽レーベル「360°records」を主宰する 虹釜太郎(にじかまたろう)による、沖縄・石垣島発スパイシー料理生活コラム。
東京在住時代より、オリジナルの「スパイス」料理の実験を繰り返してきた虹釜が、スローライフでもなく、LOHASでもない、沖縄の島の生活を報告。
「パナリ食堂」とは彼の頭の中にある架空の食堂。そこでは、島の食材と世界のスパイスによるオリジナルメニューが、日々生まれている。この連載では、都会でしか暮らしたことのない人間が 島に移住するとどうなるのかの驚きととまどい、そして、そんな生活の中で考えた、一風変わったオリジナルスパイス料理を紹介する。
カテゴリ:02 W杯パナリ(前編)( 1 )
ワールドカップ バナリプレート(前編)
●梅雨明けのオオタニワタリ
 梅雨の石垣島。

 石垣島は毎年行われているトライアスロン大会が今年も無事終了。A組663名、B組163チームが参加して街も交通規制状態。しかしそんなトライアスロン大会で盛り上がっているまっ最中、自分は人生初の大量アメンボ&シオマネキ&ムツゴロウが同時に大量生息しているポイントで一日中遊んでいた。すべて百単位の数。すごい! すっとぼけて鈍感そうですばやくかわいいムツゴロウをずーっと見ている

 と、一瞬きゃつらのてんぷら姿が脳裏をよぎるが、いかんいかん。今日は遊びにきただけ。散々シオマネキとムツゴロウと戯れた、っつーよりエイリアンと対話するかのよーにあの手この手でコミュニケーションを図るもすべて徒労に終わっただけな気もするが、それですっかり満足して市街地に帰ってくると、爽やかなアスリートたちとあんまり爽やかでない太めのアスリートたち、というかどっちかというと円盤投げの選手ぽい方たちも泡盛で乾杯中。いやーもりあがってますねぇ。そんなアスリートたちに占拠された石垣島のお隣の小浜島では日本全国からこの島のデージチュラウミ(すっごいきれいな海)に集結するイベント「ラフウォータースイム・イン・小浜島」が開催。アスリートたちがやけに多い気がするここ二ヶ月。石垣島は内地よりもずいぶん早め、それでも平年より6日遅れの5月14日に梅雨入り。東京では10月にしか体験したことのなかった怒濤の雷の日々が続き、あっさり梅雨は終了した。

 そんな梅雨あけの石垣島では最近、観光客の間で、島食材オオタニワタリがプチブレイクの兆し。シダの仲間であるこの植物。けっこうつやつやしてるのでずーっと食べてると不思議と恐竜気分になってくる。けっこうマニアックな気もするこのオオタニワタリですが、それが観光客に少し人気が出てきたのは、八重山農林高校生活科学科三年生プロジェクト班が島ならではのペープサート(紙人形劇)で、その名も「魔法を使えるオオタニワタリ君」というお題でオオタニワタリポタージュスープ、オオタニワタリ菓子パン、オオタニワタリクッキーなどを試作しまくっているせいかどうなのかは自分にはわからない。

 それにしても八重山農林高校生活科学科三年生プロジェクト班「魔法を使えるオオタニワタリ君」というこのタイトルは一体何なのか。オオタニワタリ好きっていうより、ハリポタ好きなのか?
 それはともかくその他に知られるオオタニワタリレシピとしては、オオタニワタリとたけのこ、もち米、鶏肉、にんじんをだし汁で炊き込んだ「オオタニワタリおこわ」というのもあるみたいだが、島のレギュラーメニューにはない。「八重山そばと琉球オオタニワタリおこわ」のセットとか人気出そうだけどね。
 オオタニワタリおこわこそおいていないが、島の居酒屋ではなぜかオオタニワタリの天ぷら、オオタニワタリの炒め物をオーダーする観光客がいつもより多い気が。ついでにオオタニワタリのハーブ酒も島居酒屋で出したらどうかと思うがまだお目にかかったことはない。アダン酒とか豆腐とあえてライム汁をかけると美味な「長命草」のお酒、長命草酒は稀においているお店はあるが。

 ゴーヤでクールビズ(その実態はゴーヤを栽培すると日陰が増えるから涼しいよ!というシンプルすぎるもの)っつーのも沖縄以外でも注目されているらしいですが、この6月から7月の石垣島。内地から越してきた自分にはやはり想像を絶する暑さ。体をひやすヘチマやゴーヤのありがたさがこんなに切実なのは人生初体験。韓国宮廷女官チャングムも勉強した、体を冷やす食べ物ですが、ぜひチャングムにもへちま料理考案してほしかったです。実際えっ!?てくらいの量のへちま炒めを食すとたしかに体のほてりはとれる。そんな島にもついにワールドカップのシーズンがやってきました!

●ワールドカップ、全く盛りあがらず
 石垣島のビーチではワールドカップのどさくさにまぎれて「ビーチサッカーアイランドカップ2006」が水着美女も一緒に開催!かといえば全然そんなことはないのです。石川県ふれあい昆虫館でさえ、ゲンゴロウがエサを激しく奪い合う性質を利用して、おもちゃサッカーボールにエサをくくりつけて水槽に入れ、それを激しく奪い合う、そしてヘディング攻撃とパンチングによる守りの応酬、最短距離でゴールに向かうとか常に三角形を作れとかワンツーとかは一切なく、ボールに対して果敢に挑みかかる欲望、すなわち食欲のみにつき動かされた、昆虫館選抜ゲンゴロウイレブンを観戦するという、「ゲンゴロウのワールドカップ」(ゲンゴロウサッカー大会は、ワールドカップ開催期間中を少しオーバーして、7月9日まで、毎日14:00よりキックオフ!)を開催しているというのに、この石垣島ではワールドカップは全然盛り上がっていないのである。
 1994年から全試合見ているワールドカップは自分にとっては毎回「悪のイレブン」探しの楽しみがある貴重なイベント。「悪のイレブン」とは映画や漫画の世界でもなかなかいないすさまじい存在感を放つ選手のみで構成された、自分の脳内だけに存在する夢のチーム。別にレッドカードコレクターな選手でなければならないということはないんですが、こういう選手を探すのもワールドカップのひとつの楽しみ方、そして自分にとって唯一?の楽しみ方なんであります。

 おもいかえせばボリビア代表のボスキャラにしてスーパーサブにして首領(ドンと読んでください!)であるエチェベリ、烏天狗の世界にコンバートしても番長をはれるような禍々しく強いオーラを放ったドイツ代表のエッフェンベルク、そしてワールドカップ決勝戦の舞台でその日のスタメンが決まっていたのにも関わらず、その日体調激悪の大五郎(ロナウド)が出場したいもん!という鶴(体重95キロの鶴なんているか)のひと声で出場したため、ついに決勝のピッチでそのオーラを放つことはかなわなかった、マフィアの親分を演じる俳優どもでも決してだせない首領オーラぶんぶんのエジムンドだの、毎回必ず「悪のイレブン」は登場してくるのである。いやー、世界は広い。
そして今回はといえば、あのマイク・タイソンにメンタルコントロールの方法を伝授されたという、かつてはフットボールの試合の直後にサンドバッグを叩いていたという、もはやフットボールの枠を超えた悪ガキオーラをどっかんどっかんに放っているルーニー選手がいます。そんなルーニー。ポルトガル戦では、一発退場! いやーさすが。極悪なフィッシュ&チップスが無性に食べたくなってきます。


●「日本対クロアチア」放送なし
 とゆーわけで、沖縄の石垣島で迎える初のワールドカップなんですが、未知の試合へのはやる期待と、今回出場国32の未知のレシピにこころ震え、おなかも虚無空間に凹む自分ですが、いろいろ島を調べてみたんですが、ワールドカップ記念特製プレートや記念料理をだすお店はぼくの知る限りありませんでした。
 
 そしてなんと八重山地上波ではなんと「日本対クロアチア」戦の放送がない!ことが判明。ガビーン!
 !!!というわけでネットカフェにいけば、いちおう特設モニターを用意してネット席の人は体を半身にして「日本対クロアチア」を観戦できるようにお店側は工夫をしていたのですが、なんとネット席のみなさんはオンラインゲームに夢中。
 というわけでみなさんフットボールに興味がないのでありました。しかしそんな中でも最近プロジェクターを導入した近所のバーでは、石垣島在住のフットボール好きの人たちが集まって、「日本対クロアチア」戦が見れなかった直後、仕方なくみんなで一緒に「ブラジル対オーストラリア」戦を観戦したのでありました。うーむ。
 そーゆーわけでフットボールより野球が好き!っていう島人はそのままに、ここで今回ワールドカップ出場国を島食材でアレンジしたのを、観戦しながら食べたいネ!というわけで、気をとり直して「2006 ワールドカップ パナリプレート」を考えてみましょう。

●2006ワールドカップ バナリプレート
 まずホスト国ドイツ。ソーセージの中でもニュールンベルガー。天然羊腸使用の天然ハーブ入りウィンナー、ニュールンベルガー。海のないドイツ、海だらけの沖縄、っつーことで、同じ加工肉なら沖縄も負けていられないというおつまみセットは「焼きニュールンベルガーとミミガー、チラガー」三点セット。ミミガーは耳、チラガーは面、ベルガーは元FIドライバー。それにしてもドイツ、ベスト4進出。
 みんなうちあげでは何食べてるんでしょうね。石垣島へはドイツ人の観光客も多い。しかしいまの時期は島ではジャーマンっ子はひとりも見かけません。
 またも一次リーグ敗退かという危うい戦い方で当初ブーイングをあびまくったフランス代表。しかし絶好調のスペイン代表にも競り勝ち、ついにブラジルをも撃破。今回のフランス代表はリベリーをはじめ面構えがいい。カフー、ロビーニョ、カカーと「いい人」揃いのブラジルは顔で競り負けた感あり。しかしなんとかスペイン、ブラジルを破ったとはいえ、まだまだアンリは爆発とまでいかないので、ここは白(クリームソース)と赤(パプリカソース)と青(アオブダイのミンチ! では青くならない、やはり食べ物に「青」は無理なのか)の「トリコロール・カツ丼」で準決勝、決勝にのぞんでもらいたいが、このメニューは無理がありすぎ。それならばドイツの酷暑をのりきるため、なぜか今年の沖縄は、ぐるくん大漁!なので、ぐるくんのエスカベッシュを。
 イタリア代表はなんといってもスタミナ強化にトリッパを。同じ臓物煮込みなら沖縄の中味汁も負けてはいない。たまには無茶な定食も食べよーゼということで、もつ煮込みトリッパと中身汁のダブル煮込み定食を、なぜかイタリアチームが得点を入れるとリッピ監督にのどわをかますという元気印ガットゥーゾ選手に供してもらえれば、そしてついでにのどわもしてもらえばこの蒸し暑さでも食欲もわくというもの。それにしてもガットゥーゾと全盛期のダービッツ(元オランダ代表)の豪犬対狂犬マッチアップ、見たかったですねぇ。しかし、牛の胃袋煮込みなら韓国も黙ってはいられないので、前回の2002年ワールドカップの「イタリア対韓国」戦終了直後の韓国内イタリア料理店と韓国料理店での、臓物炎のバトル・クワトロ選手権「第1試合 ミノ、第2試合 ハチノス(ここでイタリアチームが本場仕込みトリッパを披露)、第3試合 センマイ、第4試合 ギアラ」がもし実施されていたらぜひ体験したかったですが、そんなもんあるわけねーか。臓物炎のバトル・クワトロ選手権はさておき、ここ石垣島では食堂で「カツカレー」をオーダーするとたまにプチ中身汁がもれなくついてくるのである。それだけ中味を食べる習慣が当たり前にあるということですね。もちろんこんにゃくも入っていて、このプチ中味汁うまいです。

 ポルトガルに競り負けたオランダ代表は、オランダで発展したインドネシア料理「ライスターフェル」を島食材オオタニワタリやへちまを使って新レシピ練り直しをしたい。ファンバステン監督は続投とのことだが、これからも白人選手だけでやっていくのだろうか。
 新シーズンのFCバルセロナでも活躍が期待のマルケス率いるメキシコは、ジャンバラヤとタコスサラダを島風に。石垣牛のひき肉(これは石垣島の公設市場の半地下、肉売場でグラム単位で購入できるが、何に使ってもウマイ!)と、メキシコのグリーンカラーにあわせたゴーヤを練りこんだ特製タコスシェルで。中田ヒデも企画に参画したといわれるスナック「暴君ハバネロ」は「グリーン編」はでたものの、「ワールドカップスペシャルバージョン」は出なかった。ここで32種類出したら世界初だったのに。。ちなみに石垣島の某ファーストフード店の「ベジタブルタコス」はブリトー風で、包んでいるのはグリーンの皮。
 
 さて、ロナウジーニョもついに高速移動妖怪チュパカブラに変身前に大会を去った今回のワールドカップ。
 次回「ワールドカップ パナリプレート(後半戦)&世界うちなーんちゅ大会」に続きます。

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本日のパナリ食堂のメニュー

「2006ワールドカップ パナリプレート」
・「焼きニュールンベルガーとミミガー、チラガー」三点セット
・「トリコロール・カツ丼」白(クリームソース)と赤(パプリカソース)と青(紫蘇ソース、青じゃなくて紫だけど)の三種のソースをお好みで。
・「ぐるくんのエスカベッシュ」  2006年沖縄はぐるくん大漁!
・トリッパと中身汁のダブルプレート
・ゴーヤグリーンシェルの石垣牛ひき肉タコス


次回の期間限定メニュー「2006ワールドカップ パナリプレート・ノックダウン」では、更なる新メニューも多数控えています。

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□著者プロフィール
虹釜太郎(にじかまたろう)

「辺境」音楽レーベル「360°records」(www.360records.net)を主宰。2005年に長年住み慣れた東京を離れ、 沖縄の石垣島に移住。ライフワークの「スパイス料理実験」を石垣島の素材と世界のスパイスを使って実験中。音楽レーベル運営の他に、映画『ストロベリーショートケイクス』(原作:魚喃キリコ、監督:矢崎仁司、出演:池脇千鶴、安藤政信他)の音楽監督など。好きなフットボール選手は、デラペニャ、エジムンド、プロドーム、若島津(カラテ歴のある必殺「三角飛び」が得意なGKがいまFW!)、フィーゴ(武士道好きのフィーゴ。彼の経営していた日本料理店はいった
いどうなったのか)、エチェベリ(ボリビアの英雄)。
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by webmag-b | 2006-07-12 06:00 | 02 W杯パナリ(前編)