連載「石垣島の美味しいスパイス パナリ食堂」とは...
かつて渋谷で世界の「辺境」音楽を集めた伝説のレコード店「パリペキンレコーズ」を作り、現在は、石垣島に在住。「辺境」音楽レーベル「360°records」を主宰する 虹釜太郎(にじかまたろう)による、沖縄・石垣島発スパイシー料理生活コラム。
東京在住時代より、オリジナルの「スパイス」料理の実験を繰り返してきた虹釜が、スローライフでもなく、LOHASでもない、沖縄の島の生活を報告。
「パナリ食堂」とは彼の頭の中にある架空の食堂。そこでは、島の食材と世界のスパイスによるオリジナルメニューが、日々生まれている。この連載では、都会でしか暮らしたことのない人間が 島に移住するとどうなるのかの驚きととまどい、そして、そんな生活の中で考えた、一風変わったオリジナルスパイス料理を紹介する。
カテゴリ:05 沖縄タコス部( 2 )
第5回 沖縄タコス部 「ブラックタコライス!」の巻
●さあ、ついにタコスの回だ!
沖縄本島に降り立つなり、沖縄在住の友人たちと
タコス部(沖縄本島タコス屋&メキシコ料理屋めぐり)をスタート。
実は沖縄の人たちの誰もが皆そんなにタコス&タコライスを激しく愛しているわけではない。
今回も短い間に何軒もはしご。ほんとに沖縄のみなさんには申し訳なかったが、それもタコスへの愛ゆえに。

タコスとタコライスが、沖縄以外の日本でも、
完全な「日本食」と化したカレーのような存在になるまで、自分はタコス部は続けるつもり。

なぜか石垣島を直撃しまくる台風を避けるように、今回は、
タコスとタコライス不毛の地である石垣島のタコス&タコライスを総ざらいで食べた後、
沖縄本島と東京のタコス界のニューウェーブの食べ歩きもたくさんしてきた。

こんだけタコス&タコライスを食べ歩いた1ヶ月はもちろん人生初。
先月の八重山そば強化月間もかなりハードであったが、今回の寝ても覚めてもタコス&タコライス月間は、
タコス以外で食す具がすべてタコスの具にみえてきて、
すべてのソースがサルサソースの亜流に見えるほど強烈なものとなった。

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タコライスをテイクアウトしたらあまりに量が少ない。
隣に顔出してるのは島で発見したアジアンポケモン


●石垣島のタコスの限界

さて。まずは、石垣島のタコス&タコライスである。
石垣島には、沖縄本島の、キングターコスやセニョールターコ、
タコライスは出さないタコス専門店メキシコ、
東京のタコスマイルのようなタコス&タコライスだけを出す専門店は存在しない。

しかし、そこは沖縄。タコス&タコライスを出さないわけにはいかない。
まず観光客がよくいくカフェ2軒では、
タコライス(メキシカン)、タコライス(アジアン)とブリトータイプのタコスを出す店と、
モスバーガーのナンタコスに少し毛が生えた程度のタコスナンピザを出す店がある。
その近くの島デリカフェには一本600円以上する「ヴェジタブルタコス」を出しており、
またその近くの、イカ墨コロッケを出すコロッケ屋さんでは、コロッケちぎりのせタコライスを出している。

あやぱにモール周辺から離れると、石垣牛焼肉専門店の昼限定メニュー「石垣牛タコライス丼」。

そして離島桟橋近くの数少ないタコスが売りの食堂では、
プチトマトを使った、パイ生地ぽい皮のタコスが3個500円、しかし6個800円で食べれるお店がある。
そして石垣島のタコライスの新顔としては、石垣串焼き専門店の「石垣牛タコライス定食」がある。
石垣島のこれらのお店のタコス&タコライスはもう何回食べたかわからないくらい繰り返し食べた。。。

この際だし、はっきり言おう。
石垣島は沖縄とはいってもやはり、タコス不毛の地だと。

たしかに内地のくされカフェのタコス&タコライスよりは少しは種類も多いかもしれない。
しかしやはり沖縄本島のタコス&タコライスのワイルドさと
雑食性と元気っぷりとは到底比べられるものはない。

やはりタコス&タコライスという食文化は基地とはきってはきれない存在なのかもしれない。
今回のタコス部の旅で、
石垣島ならではのタコス&タコライス誕生のヒントが生まれるかどうかは正直まだわからない。

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石垣島タコス六個テイクアウト!


●理想のタコスを求めて
おれがいつもぼんやりと考えている理想のタコス&タコライスとは、
もはや完全な「日本食」と化した、日本における「カレー」
と同じような存在となった「タコス&タコライス」。
本場であるメキシコ、アメリカに忠実なレシピで作られたものがある一方、
自由自在に「具」と「皮」をその作り手のアイデアに応じて、それを提供する「土地」の食材に応じて、
そして別の料理の専門店でありながら
その店独自の「タコス&タコライス」を出すことが当たり前になっているような状況が
日本においてできあがっているようなところで、自然にできあがる、
日本独自の「タコス&タコライス」文化。

例えば、カレーの場合は、蕎麦屋の蕎麦だしカレーは言うに及ばず、
和食の店が大根おろしと味噌を使った「特製和食カレー」をだしたり、
フレンチのお店がじっくり漉したルーとサフランとカレーのスパイスで煮込んだ
「魚介フレンチカレー」をだしたり、
フォアグラとイカ墨を煮込んだ「フレンチブラックカレー」をだしたり、
中華のお店が八角や中華食材をふんだんに使った「伽哩飯」をだしたりするように、
「タコス&タコライス」も、
別にカリフォルニアキュイジーヌ系でもなんでもない街のすし屋が子供向けにタコスを出したり
(これは難易度高いだろうが)、
中華のお店が、魚介を使った中華風タコライスをだしたり、
タコス皮にウクライナ蕎麦粉を使った、普通の街のパン屋のピロシキコーナーの隣にあるウクライナ風タコス、
フレンチのお店の「ブラックタコス」や、
イタリアンならではの「レッドトリッパタコス」が自然に生まれる状況が日本にできあがっているという……。

そんな中で日々、カジュアルに生まれてくる「タコス&タコライス」がおれの理想。

そんなことをつらつら考えながら、飛行機に乗って、
ただタコス&タコライスの最新動向を探るために飛行機で沖縄本島へ!

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ここの「ライスタコス」は皮はぼろカタ系、
ライスは水分若干多め白米、ソースはデフォルトで

●ワイルドで元気が出る日常食!沖縄本島のタコスへの思い
以前のタコス部でその皮のうまさと中毒性に震えたタコスしかださないお店メキシコ(タコライスなし)、
宜野湾のいつも行くキングターコスの「タコライスチーズ野菜のせ」、
そしてその近くの、なっちゃんメニューナンバー
1番らいすタコス、2番なっちゃんタコライス、3番タコライスチーズ、
20番ステーキサンド、44番メキシカンピザ、45番チャーハン
っていつまで続くんじゃい!というナンバー制の導入と、
豊富すぎるサイドメニューたち
〜チキンサンドライスバージョン380円、エビサンドライスバージョン400円、
そして嫌がらせを超えたなっちゃんの愛の結晶
〜スペシャルランチA
エビフライ+トンカツ+チキン+ハンバーグ+タマゴヤキ+サラダ+スープ1200円
という定食のビッグな魂が売りのタコス屋の域を完全に超えてるタコス屋なっちゃん、
そして金武のタコス密集地帯、
われわれタコス部の面々は「ゾーンタコス」と呼ぶ一帯で供される、内地のくされカフェそして、
石垣島の観光客向けなスーパーライトなタコス&タコライスとは無縁の、
屋久島のような趣きのビッグサイズタコライスと皮がめちゃ後をひく食感のタコスたち、
ブリトーとエンチラーダが忘れられないセニョールターコ、
名前も忘れたが今でも稼働しているヴィンテージゲームマシンのぴゅんぴゅん音がこだまする店内で、
すべてローマ字表記な沖縄豚料理がアメリカ人客と一緒に味わえるタコス屋、
他店にはないチキンタコスが楽しめるチャーリータコス、
ローストチキン専門店ならではの美味チキンタコスを出すお店のチキンタコステイクアウト、
そして空港通りの名店90th HOLE の癖になるタコスをもう一度今回も味わいたい……。
そしてまだ見ぬタコス界のニューウェーブたち。

那覇空港に向かう飛行機の中でかつて沖縄本島で食べたタコス&タコライスの記憶たちが
右から左から後ろから前から甦る。
緊急時用酸素マスクがタコスの皮に見えてくる……。
うーんまずいなぁ。かなりのタコス禁断症状がでてきている。
限られた滞在日数の中でどのタコスを選べばいいのか……。
うーむ、むむむむ、と悩んでいるうちにあっさり機体は那覇に。

ヨシ! 悩んでいても仕方がない。
今回はタコス世界のニュータイプ、ニューウェーブを出しているといわれるお店を
那覇、東京で短期集中走破することにしよう。
そのためにもうたっぷり石垣島のタコス&タコライスは食べ尽くしてきたのだ。

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沖縄本島のタコス。
ここの店のは、皮長め、かため、割れやすい系。
ミートとチーズは攻撃的ではない

●即座に新種発見か?

那覇空港に着いたその足でまず、最近あやしげなメニューが増えたといわれるお店に直行。
場所が移転したときいていたので、おそるおそる車で探索を開始したが運良くあっさり発見。
扉を開けると同時に、カウンター上のメニューに視線は釘付けに。

「ブラックライス」「タコタンヌードル」
という素敵な名前。

もちろんそのメニューの横には
「タコス」「タコライス」
もある。しかし、

ブラックである。ブラックライスである。

店員さんの多すぎますよ!という注意を制して、
いきなり、「ブラックライス」「タコタンヌードル」「タコス」「ライスタコス」を同時注文。

....ブラックライスとは一体なんなのか....??

不安と恍惚がよぎりながら、タコス部の面々……というかあと1人しかいないんですけど、
一緒にブラックタコライスとは何かをひたすら夢想。
そんなもん店員さんに質問すれば一発じゃんとは言わないでほしい。
実際に現物が出てくるまであーでもないこーでもないこーだあーだそーだいやいやいやいや……などと
料理のイメージを膨らませてエヘヘアハハむむむむむと想像することも「食事」の一つなのである。
だからなんでもかんでも店員さんにきいて、またはその日の食事を完全に自分の好み通りに、
想定の範囲内で組み立てるという高級フレンチや一部のセレブ中華な食事の仕方にはどうしても共感できない。
想定外の驚きこそ、スパイスでしょ。なんちて。とそれはともかくブラックタコライス。
一体なんなのか。

イカ墨を使ったものなのか。タコスの皮がブラックでそれをクラッシュしてライスに散りばめ、
上にタコライスの具がのっているのか、それとも白いライスに具だけがブラックなのか、
それともブラックカレーの変形なのか、
もしかして庖丁人味平がかつて勝負に負けたという非合法ドラッグが混入した
伝説の「ブラックカレー」のタコライス版なのか、
それとも一見普通のタコライスに見えるが罰ゲームなみの驚愕の辛さが食べる人を襲い、
緊急入院に追い込むブラックな食べ物なのか、
それとも黒米を炊いただけの御飯しかでてこなかったらどーしよう……

などと悶えているうちにあっさりとソレは卓上にそっと置かれた。

●姿を現したブラックタコライス
ブラックライスとは……
そう、それは、イカ墨御飯の上に通常のタコライスの具と、
それに合わせて、魚介炒めがたっぷりと添えられた、
イカ墨食文化圏である沖縄の利点を活かしながら、タコライスの基本精神も忘れず、
さらにひとひねりした、この店オリジナルの
「ブラックタコライス」
であった。

もちろん量はたっぷりである。

…………。

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ブラックタコライス


そーだよなぁ。ほんとこういうのが石垣島や内地でもどちらでもできるはずなのだよなあ。
観光客向けに供してその場の代金だけもらえればいい、
リピーターいらんわ的な姿勢が垣間見えまくる島や内地のカフェやレストラン、
居酒屋でだしているタコライス、タコスにはいつもがっかりさせられてきた。
いや別に観光客向けになめたタコライスをだしているのではなく、
ただ単にタコライス&タコスに愛情が全くないのかもしれない。
ただ沖縄で店を出しているから、ただ内地で沖縄料理を出すお店をやっているから、
カフェでタコライスくらい適当にメニューにいれときゃいいわ、カフェ飯に飽きた客にもいいでショ的な
かる〜い感覚なのかもしれない。
でもタコスやタコライスに愛情がないのならそんなの個人経営の店で出す必要なんか全然ない。
ファミレスのロイヤルホストにおいてあるタコスのほうがよっぽどましだ。
沖縄の金武や宜野湾の本場(?)タコス&タコライスを体験した観光客にはそんなもの全然通用しないだろう。

●タコス&タコライスへの愛が本当にあるのかどうかが大問題
実はここらへんのところはいわゆる沖縄観光ガイドはもちろん、つっこんだことを書いている沖縄本や、
沖縄の食事情に詳しい沖縄専門ライターのテキストでもほとんど触れられることはない。
みんな沖縄の素晴らしいところしか書かない。
しかしあまりに手抜きのタコス、魂の抜けたタコライスばっかり沖縄の人が供しているのを見ると
やはりどうしてもひとこと言いいたくなってしまう。本当にそれでいいの?と。
沖縄郷土料理に内地の人間があーだこーだ言えば沖縄の人はすぐ言い返してくる。食文化が違うのだと。
しかし手抜き魂抜きのタコライスに、
沖縄「ゾーンタコス」のタコス&タコライスを知る内地の人間が何かを言えばどうなるのか。

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チキンタコス! しかも他のお店、例えば
チャーリータコスのチキンタコスみたいではなく、
ローストチキンの店がだしてる「ローストチキンタコス」
爽やかにしてあとをひく。普段から食べたい

食文化の違いだ、とは言えないだろう。
しかし、紛れもなく沖縄食文化であるはずのタコライスを沖縄食と認めない人たちもいるだろう。
ことはそう簡単ではないのだ。
とはいえ沖縄人、八重山人うんぬん以前に
単純にタコス&タコライスに愛情なくて手抜きのものをだしているのに?と思ったり、
もう少しまともなものを!と感じたりすることを伝えると、
いきなり話が、島が急激に内地化することの危険とか、
島のいいものは守らなきゃみたいなことに急にすり替わったりすると、
何でもかんでも沖縄の伝統、島を守ることに結びつけすぎて語るっていうのも
少し行きすぎてるとこもあるんじゃないかと思ってしまう時もたまにはある。

手抜きすぎるタコライスの言い訳に「沖縄」をもってくるのはずるい。
手抜きを「沖縄スタイル」とすりかえてしまえば、そこにはどんな沖縄食文化の未来もないだろう。
ちょっときつい言い方をし過ぎたかもしれない。
が、あまりに手抜きのタコライスを供している沖縄人、八重山人
(内地から移住してきた人、内地からバイトに来ている人も含む)は、
「ゾーンタコス」のタコス&タコライスを食べ歩きを経ているようにはとても感じられない。

例え沖縄に何十年住んでいようが、内地から引っ越してずいぶんたっていようが、
それが手抜きの言い訳にはならない。
もし「ゾーンタコス」のあの雑多なエネルギーと素晴らしさを経験した上で手抜きを出し続けるなら
それはもはや沖縄とか内地の問題ではなく、それが許されるとしている個人の問題だろう。
なんで今回ここまでこういう微妙なことについて触れているのかといえば、
特に「タコライス」や「タコス」という食べ物は純粋に、沖縄郷土料理ではないにも関わらず、
堂々たる沖縄の代表食のひとつであり、
その「沖縄」の一部である離島も沖縄であるがゆえに
なんとなく「タコス」と「タコライス」をお店でだしちゃったりしているが
それはなぜか「常識」だからというある意味曖昧な、沖縄だからという無意識に一部支えられたものであり、
またもちろん「タコス」も「タコライス」も沖縄や東京、
内地での「メキシコ料理店」の堂々たるメニューでもあるという、
何重にもややこしい、だからこそ魅力的な食べ物であるからだ。
これが、ソーキ、三枚肉、とかだったらそこまでややこしい話にはならないだろう。
ある意味曖昧さといかがわしさと猥雑さと見かけ以上の器の大きさを持っている日常食。
だからこそオモシロイ。

おそらく沖縄本島内の「ゾーンタコス」のタコス&タコライスたちはまったくもって地元に密着して、
愛されている食文化であるからして、これからもその高い、ワイルドなレベルを保っていくはずに違いない。
問題なのは、沖縄本島であれば、国際通り周辺であるとか、
新開発の繁華街、離島、八重山におけるソレである。
手を抜こうと思えばいくらでも。
しかし実はいくらでも魅力的なものにそれを昇華することも可能なはずだ。

●来た!タコタンヌードル!
なんつーややこしいことを考えてる間に、来た!
問題の謎のメニュー、タコタンヌードルだ!
さて、このタコタンヌードル。何かとひとことでいえば、タコスラーメンライスである。
と言うと余計わかりにくいかもしれない。
つまりラーメンライスにタコスの皮と具が載っちゃってしまっていると。
いや、やっぱり違う。
ラーメンではなく沖縄そばだ。しかしスープはラーメンぽい。
そして麺の上にはタコスの具がのり、なぜかどんぶりの外周に、
ちょうど家系ラーメンで海苔をまわりに飾るように、タコスのでっかい皮がスープにぶっささっている。

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タコタンヌードル!ついに!珍種発見!
タコスと沖縄そばと雑炊がフュージョン


そしてラーメンライスばりについてくるライスは、メキシカンライス。
しかしこのメキシカンライス。それだけ食べるとほとんど味がない。
目が点になりながらも食べ進むタコス部のおれたち。
食べ進んでもひじょうに手持ちぶさたのまま残ってしまうタコスのでか皮をおもむろに取り出し、
どんぶりの汁を吸ってふにゃっている皮に具を無理やり巻き食べようとするが、
ふにゃにゃ〜んとくずれてしまう。
そのまま麺でまるめこみ無理やり口に入れる。
うーん雰囲気雰囲気とうなずきながら、更に食べ進むと店長がひとこと。

「そろそろ入れてみたらよいですヨ〜!」

って何を? そーか、メキシカンライスですね。
よし、それをいきなりどんぶりに投入。
タコタンヌードルが「タコスおじや」に変身という具合。
店長の熱意と狙いは十分わかった。そのイメージの完遂率は自分には何%かわからない。
しかし内地や島のくされタコライスたちと比べて、このチャレンジっぷりは何なのだ。大好きだ、こーいうの。

そーいうわけで「ゾーンタコス」から少し離れた、泊の地で誕生したこの二大変わり種メニュー
「ブラックライス」「タコタンヌードル」にすっかり心を奪われていた我々だが、
ここの「ライスタコス」も秀逸だった。
具は「牛」ではなく「鶏」を選択したが、都内のメキシコ料理店やタコス屋と比べても、
絶妙な少なさのライスの量と「鶏」の味付けの上品と
ジャンクの端境の味付けの後ひき感のバランスがすばらしい。
あぁこんなお店が住んでる近くにあったらねぇ。

●架空線上のタコライス
というわけでいきなりタコス界のニューウェーブにぶちあたった今回のタコス部だが、
この最初のエンカウンターがいかに貴重なものであったかは追々明らかになっっていったのであった。
このブラックライスを出すタコス屋の後は、タコス屋界の標準時刻いや標準味参照店、
グルメ的に激うまなわけでもなければもちろんまずいわけもない、
やっぱりついつい食べてしまう宜野湾キングターコスで、
通算何度目かわからない「タコライス、チーズ、野菜のせ」を頼む。
ここではただの「タコライス」を頼むと、チーズもレタスもまったく載っていないのだ。
さて「標準」タコライスを確認した後は、まだがっつり食べたことのなかった沖縄本島のメキシコ料理屋に。
もちろんタコス&タコライスもあるが、タキトス、タコスビーフ、チーズビーフビーンズ、
トルティアピザ、ボリトー、チムチョンガ、エンチラーダ、
サンタコタコス、ファヒタス、チリオムレツ、スパニッシュオムレツ、
スウィートトマトオムレツ、チリチキン、カネロニといった、
なかには内地のメキシコ料理屋でもあまりみかけないメニューも多数揃えるお店へ。
ボリトーとチムチョンガとエンチラーダを個々別々で食べながらも、
途中無理やりライスの上にそれらをつき崩して、「架空線上のタコライス」を勝手に味わう。

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チムチョンガ!


ちなみにタキトスは、同名のフィリピンのコーンスナックがあるが、
店ではもちろんこれがでてくるわけではない。
お店ででてくるタキトスとは、チムチョンガほどカリカリには揚がってはいないが、
揚げた薄めの皮にビーフが詰まったとても癖になる包みものである。
他のつけあわせできたサワークリーム、グアカモレもつけたりしながら、
これをタコス皮で包んだら食感的にぴったりくるのはどれかなーとかあれこれ言いながら次々に食べる。
結局いろんな具をわいわいと野菜、サルサ、グアカモレをつけながら挟んで食べる喜び。
これが少しインスタント化して、すぐテイクアウトも可能な奇跡のファーストフードがタコス。
そして日本特有の「なんでもどんぶりにする」という無敵のどんぶり化本能が
それを取り込んだのがタコライスなのだろうか。
タコスの兄貴分?がチムチョンガ、ケサディヤ、ファヒタス、エンチラーダ、タキトス、ナチョス、
ブリトー…たちであるならば、実はタコスはいくらでも豪華にでもなれるし、
またディップのヴァリエーションもサルサ、サワークリーム、グアカモレ(アボガド)の基本を広げさえすれば
またいくらでも贅沢になれる。
そしてその逆に、よりミニマムな方向性もありえるが、その一つの究極到達点が
他のライバル店がそのミニマルな中毒性に太刀打ちすることができていない、
タコス皮のうまさで燦然と沖縄タコス界(タコライスはなし)に別格として存在し続けるお店メキシコだろう。
そしてミニマムではないもうひとつの方向性。
それはインドカレーが日本のカレーライスになったような、無限のヴァリエーションを持つ
「日常タコス」としての方向だろう。
そしてこの中のひとつに「島タコス」を確立できるかどうかの問題も入ってくるはず。

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新種タコライス ポーク+スペシャルソース


●そしてタコスへの思いはつきない
そんなことを考えながら、ゲート通りのタコスの名店、90thHOLEを探し続けるが
やはりこのお店はなくなってしまったようだ。
セニョールターコでエンチラーダとブリトーをさらにつまみながら、やっぱりここでもタコスを食べる。
短期間にこんだけタコスを集中して食べると、意識はもうタコスの皮で包んでいる具には向かわず、
皮の違いがどんどん気になってくる。
いろんなお店のタコスを食べ比べるのって、やっぱり皮の違いがおもしろいから。
ピタパン、エキメキ、ワッフル、クレープ(ウクライナ家庭料理の蕎麦粉クレープをはやく食べたい)
好きでもある自分は、もはやこの一ヶ月で何個目のタコスかわからないタコスを食べながら、
その皮の違いに思いをはせるうち、なぜか、

ポレッキFC(トルコ)VS モモFC(モンゴル)
その勝者 VS 沖縄タコスFC(沖縄)

といった架空の食の大会「世界スパイス包み焼き選手権」の一次リーグの模様の実況中継……
といった妄想がいっきに脳内に広がってきた。
そういえばトルコ料理には、パフポレッキという、スパイシーひき肉入揚餃子があった。
これってほとんどメキシコ料理のチムチョンガだろう。
必ずヨーグルト系ソースをかけるトルコ料理だが、包みものにソースをかけるというメキシコ料理で、
ソースでヨーグルトを使えば、ターキッシュメキシカン。
それをタコスでやってしまえば通常より細かくカットした鶏ケバブをタコス皮に挟み、
ヨーグルトソースを使えばターキッシュメキシカンタコスになるだろう、それで……
とそんなことをつらつら考えると沖縄滞在ドイツ人が斜め前のテーブルで
にっこりタコスとエンチラーダを食べている……。
そうか。ドイツのシュヴァーベン地方のマウルタッシェン。
ほうれんそうとスモークハム、タマネギとベーコンなどを細かく刻んだ具の、
ドイツ版餃子ともいえる「マウルタッシェン」。
このマウルタッシェンを食べ慣れたドイツ人にタコスを作らせたら
どんな「グリーンタコス」ができあがるのか、どんな「ソーセージタコス」ができるのか。

そんなことを考えていたら沖縄タコス部の夜はあっという間にふけていったのだった。


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by webmag-b | 2006-10-26 18:14 | 05 沖縄タコス部
第5回 沖縄タコス部 「ブラックタコライス!」の巻
●さあ、ついにタコスの回だ!
沖縄本島に降り立つなり、沖縄在住の友人たちと
タコス部(沖縄本島タコス屋&メキシコ料理屋めぐり)をスタート。
実は沖縄の人たちの誰もが皆そんなにタコス&タコライスを激しく愛しているわけではない。
今回も短い間に何軒もはしご。ほんとに沖縄のみなさんには申し訳なかったが、それもタコスへの愛ゆえに。

タコスとタコライスが、沖縄以外の日本でも、
完全な「日本食」と化したカレーのような存在になるまで、自分はタコス部は続けるつもり。

なぜか石垣島を直撃しまくる台風を避けるように、今回は、
タコスとタコライス不毛の地である石垣島のタコス&タコライスを総ざらいで食べた後、
沖縄本島と東京のタコス界のニューウェーブの食べ歩きもたくさんしてきた。

こんだけタコス&タコライスを食べ歩いた1ヶ月はもちろん人生初。
先月の八重山そば強化月間もかなりハードであったが、今回の寝ても覚めてもタコス&タコライス月間は、
タコス以外で食す具がすべてタコスの具にみえてきて、
すべてのソースがサルサソースの亜流に見えるほど強烈なものとなった。

b0104576_17323870.jpg









タコライスをテイクアウトしたらあまりに量が少ない。
隣に顔出してるのは島で発見したアジアンポケモン


●石垣島のタコスの限界

さて。まずは、石垣島のタコス&タコライスである。
石垣島には、沖縄本島の、キングターコスやセニョールターコ、
タコライスは出さないタコス専門店メキシコ、
東京のタコスマイルのようなタコス&タコライスだけを出す専門店は存在しない。

しかし、そこは沖縄。タコス&タコライスを出さないわけにはいかない。
まず観光客がよくいくカフェ2軒では、
タコライス(メキシカン)、タコライス(アジアン)とブリトータイプのタコスを出す店と、
モスバーガーのナンタコスに少し毛が生えた程度のタコスナンピザを出す店がある。
その近くの島デリカフェには一本600円以上する「ヴェジタブルタコス」を出しており、
またその近くの、イカ墨コロッケを出すコロッケ屋さんでは、コロッケちぎりのせタコライスを出している。

あやぱにモール周辺から離れると、石垣牛焼肉専門店の昼限定メニュー「石垣牛タコライス丼」。

そして離島桟橋近くの数少ないタコスが売りの食堂では、
プチトマトを使った、パイ生地ぽい皮のタコスが3個500円、しかし6個800円で食べれるお店がある。
そして石垣島のタコライスの新顔としては、石垣串焼き専門店の「石垣牛タコライス定食」がある。
石垣島のこれらのお店のタコス&タコライスはもう何回食べたかわからないくらい繰り返し食べた。。。

この際だし、はっきり言おう。
石垣島は沖縄とはいってもやはり、タコス不毛の地だと。

たしかに内地のくされカフェのタコス&タコライスよりは少しは種類も多いかもしれない。
しかしやはり沖縄本島のタコス&タコライスのワイルドさと
雑食性と元気っぷりとは到底比べられるものはない。

やはりタコス&タコライスという食文化は基地とはきってはきれない存在なのかもしれない。
今回のタコス部の旅で、
石垣島ならではのタコス&タコライス誕生のヒントが生まれるかどうかは正直まだわからない。

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石垣島タコス六個テイクアウト!


●理想のタコスを求めて
おれがいつもぼんやりと考えている理想のタコス&タコライスとは、
もはや完全な「日本食」と化した、日本における「カレー」
と同じような存在となった「タコス&タコライス」。
本場であるメキシコ、アメリカに忠実なレシピで作られたものがある一方、
自由自在に「具」と「皮」をその作り手のアイデアに応じて、それを提供する「土地」の食材に応じて、
そして別の料理の専門店でありながら
その店独自の「タコス&タコライス」を出すことが当たり前になっているような状況が
日本においてできあがっているようなところで、自然にできあがる、
日本独自の「タコス&タコライス」文化。

例えば、カレーの場合は、蕎麦屋の蕎麦だしカレーは言うに及ばず、
和食の店が大根おろしと味噌を使った「特製和食カレー」をだしたり、
フレンチのお店がじっくり漉したルーとサフランとカレーのスパイスで煮込んだ
「魚介フレンチカレー」をだしたり、
フォアグラとイカ墨を煮込んだ「フレンチブラックカレー」をだしたり、
中華のお店が八角や中華食材をふんだんに使った「伽哩飯」をだしたりするように、
「タコス&タコライス」も、
別にカリフォルニアキュイジーヌ系でもなんでもない街のすし屋が子供向けにタコスを出したり
(これは難易度高いだろうが)、
中華のお店が、魚介を使った中華風タコライスをだしたり、
タコス皮にウクライナ蕎麦粉を使った、普通の街のパン屋のピロシキコーナーの隣にあるウクライナ風タコス、
フレンチのお店の「ブラックタコス」や、
イタリアンならではの「レッドトリッパタコス」が自然に生まれる状況が日本にできあがっているという……。

そんな中で日々、カジュアルに生まれてくる「タコス&タコライス」がおれの理想。

そんなことをつらつら考えながら、飛行機に乗って、
ただタコス&タコライスの最新動向を探るために飛行機で沖縄本島へ!

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ここの「ライスタコス」は皮はぼろカタ系、
ライスは水分若干多め白米、ソースはデフォルトで

●ワイルドで元気が出る日常食!沖縄本島のタコスへの思い
以前のタコス部でその皮のうまさと中毒性に震えたタコスしかださないお店メキシコ(タコライスなし)、
宜野湾のいつも行くキングターコスの「タコライスチーズ野菜のせ」、
そしてその近くの、なっちゃんメニューナンバー
1番らいすタコス、2番なっちゃんタコライス、3番タコライスチーズ、
20番ステーキサンド、44番メキシカンピザ、45番チャーハン
っていつまで続くんじゃい!というナンバー制の導入と、
豊富すぎるサイドメニューたち
〜チキンサンドライスバージョン380円、エビサンドライスバージョン400円、
そして嫌がらせを超えたなっちゃんの愛の結晶
〜スペシャルランチA
エビフライ+トンカツ+チキン+ハンバーグ+タマゴヤキ+サラダ+スープ1200円
という定食のビッグな魂が売りのタコス屋の域を完全に超えてるタコス屋なっちゃん、
そして金武のタコス密集地帯、
われわれタコス部の面々は「ゾーンタコス」と呼ぶ一帯で供される、内地のくされカフェそして、
石垣島の観光客向けなスーパーライトなタコス&タコライスとは無縁の、
屋久島のような趣きのビッグサイズタコライスと皮がめちゃ後をひく食感のタコスたち、
ブリトーとエンチラーダが忘れられないセニョールターコ、
名前も忘れたが今でも稼働しているヴィンテージゲームマシンのぴゅんぴゅん音がこだまする店内で、
すべてローマ字表記な沖縄豚料理がアメリカ人客と一緒に味わえるタコス屋、
他店にはないチキンタコスが楽しめるチャーリータコス、
ローストチキン専門店ならではの美味チキンタコスを出すお店のチキンタコステイクアウト、
そして空港通りの名店90th HOLE の癖になるタコスをもう一度今回も味わいたい……。
そしてまだ見ぬタコス界のニューウェーブたち。

那覇空港に向かう飛行機の中でかつて沖縄本島で食べたタコス&タコライスの記憶たちが
右から左から後ろから前から甦る。
緊急時用酸素マスクがタコスの皮に見えてくる……。
うーんまずいなぁ。かなりのタコス禁断症状がでてきている。
限られた滞在日数の中でどのタコスを選べばいいのか……。
うーむ、むむむむ、と悩んでいるうちにあっさり機体は那覇に。

ヨシ! 悩んでいても仕方がない。
今回はタコス世界のニュータイプ、ニューウェーブを出しているといわれるお店を
那覇、東京で短期集中走破することにしよう。
そのためにもうたっぷり石垣島のタコス&タコライスは食べ尽くしてきたのだ。

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沖縄本島のタコス。
ここの店のは、皮長め、かため、割れやすい系。
ミートとチーズは攻撃的ではない

●即座に新種発見か?

那覇空港に着いたその足でまず、最近あやしげなメニューが増えたといわれるお店に直行。
場所が移転したときいていたので、おそるおそる車で探索を開始したが運良くあっさり発見。
扉を開けると同時に、カウンター上のメニューに視線は釘付けに。

「ブラックライス」
「タコタンヌードル」

という素敵な名前。

もちろんそのメニューの横には
「タコス」
「タコライス」
もある。しかし、

ブラックである。ブラックライスである。

店員さんの多すぎますよ!という注意を制して、
いきなり、「ブラックライス」「タコタンヌードル」「タコス」「ライスタコス」を同時注文。

....ブラックライスとは一体なんなのか....??

不安と恍惚がよぎりながら、タコス部の面々……というかあと1人しかいないんですけど、
一緒にブラックタコライスとは何かをひたすら夢想。
そんなもん店員さんに質問すれば一発じゃんとは言わないでほしい。
実際に現物が出てくるまであーでもないこーでもないこーだあーだそーだいやいやいやいや……などと
料理のイメージを膨らませてエヘヘアハハむむむむむと想像することも「食事」の一つなのである。
だからなんでもかんでも店員さんにきいて、またはその日の食事を完全に自分の好み通りに、
想定の範囲内で組み立てるという高級フレンチや一部のセレブ中華な食事の仕方にはどうしても共感できない。
想定外の驚きこそ、スパイスでしょ。なんちて。とそれはともかくブラックタコライス。
一体なんなのか。

イカ墨を使ったものなのか。タコスの皮がブラックでそれをクラッシュしてライスに散りばめ、
上にタコライスの具がのっているのか、それとも白いライスに具だけがブラックなのか、
それともブラックカレーの変形なのか、
もしかして庖丁人味平がかつて勝負に負けたという非合法ドラッグが混入した
伝説の「ブラックカレー」のタコライス版なのか、
それとも一見普通のタコライスに見えるが罰ゲームなみの驚愕の辛さが食べる人を襲い、
緊急入院に追い込むブラックな食べ物なのか、
それとも黒米を炊いただけの御飯しかでてこなかったらどーしよう……

などと悶えているうちにあっさりとソレは卓上にそっと置かれた。

●姿を現したブラックタコライス
ブラックライスとは……
そう、それは、イカ墨御飯の上に通常のタコライスの具と、
それに合わせて、魚介炒めがたっぷりと添えられた、
イカ墨食文化圏である沖縄の利点を活かしながら、タコライスの基本精神も忘れず、
さらにひとひねりした、この店オリジナルの
「ブラックタコライス」
であった。

もちろん量はたっぷりである。

…………。

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ブラックタコライス


そーだよなぁ。ほんとこういうのが石垣島や内地でもどちらでもできるはずなのだよなあ。
観光客向けに供してその場の代金だけもらえればいい、
リピーターいらんわ的な姿勢が垣間見えまくる島や内地のカフェやレストラン、
居酒屋でだしているタコライス、タコスにはいつもがっかりさせられてきた。
いや別に観光客向けになめたタコライスをだしているのではなく、
ただ単にタコライス&タコスに愛情が全くないのかもしれない。
ただ沖縄で店を出しているから、ただ内地で沖縄料理を出すお店をやっているから、
カフェでタコライスくらい適当にメニューにいれときゃいいわ、カフェ飯に飽きた客にもいいでショ的な
かる〜い感覚なのかもしれない。
でもタコスやタコライスに愛情がないのならそんなの個人経営の店で出す必要なんか全然ない。
ファミレスのロイヤルホストにおいてあるタコスのほうがよっぽどましだ。
沖縄の金武や宜野湾の本場(?)タコス&タコライスを体験した観光客にはそんなもの全然通用しないだろう。

●タコス&タコライスへの愛が本当にあるのかどうかが大問題
実はここらへんのところはいわゆる沖縄観光ガイドはもちろん、つっこんだことを書いている沖縄本や、
沖縄の食事情に詳しい沖縄専門ライターのテキストでもほとんど触れられることはない。
みんな沖縄の素晴らしいところしか書かない。
しかしあまりに手抜きのタコス、魂の抜けたタコライスばっかり沖縄の人が供しているのを見ると
やはりどうしてもひとこと言いいたくなってしまう。本当にそれでいいの?と。
沖縄郷土料理に内地の人間があーだこーだ言えば沖縄の人はすぐ言い返してくる。食文化が違うのだと。
しかし手抜き魂抜きのタコライスに、
沖縄「ゾーンタコス」のタコス&タコライスを知る内地の人間が何かを言えばどうなるのか。

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チキンタコス! しかも他のお店、例えば
チャーリータコスのチキンタコスみたいではなく、
ローストチキンの店がだしてる「ローストチキンタコス」
爽やかにしてあとをひく。普段から食べたい

食文化の違いだ、とは言えないだろう。
しかし、紛れもなく沖縄食文化であるはずのタコライスを沖縄食と認めない人たちもいるだろう。
ことはそう簡単ではないのだ。
とはいえ沖縄人、八重山人うんぬん以前に
単純にタコス&タコライスに愛情なくて手抜きのものをだしているのに?と思ったり、
もう少しまともなものを!と感じたりすることを伝えると、
いきなり話が、島が急激に内地化することの危険とか、
島のいいものは守らなきゃみたいなことに急にすり替わったりすると、
何でもかんでも沖縄の伝統、島を守ることに結びつけすぎて語るっていうのも
少し行きすぎてるとこもあるんじゃないかと思ってしまう時もたまにはある。

手抜きすぎるタコライスの言い訳に「沖縄」をもってくるのはずるい。
手抜きを「沖縄スタイル」とすりかえてしまえば、そこにはどんな沖縄食文化の未来もないだろう。
ちょっときつい言い方をし過ぎたかもしれない。
が、あまりに手抜きのタコライスを供している沖縄人、八重山人
(内地から移住してきた人、内地からバイトに来ている人も含む)は、
「ゾーンタコス」のタコス&タコライスを食べ歩きを経ているようにはとても感じられない。

例え沖縄に何十年住んでいようが、内地から引っ越してずいぶんたっていようが、
それが手抜きの言い訳にはならない。
もし「ゾーンタコス」のあの雑多なエネルギーと素晴らしさを経験した上で手抜きを出し続けるなら
それはもはや沖縄とか内地の問題ではなく、それが許されるとしている個人の問題だろう。
なんで今回ここまでこういう微妙なことについて触れているのかといえば、
特に「タコライス」や「タコス」という食べ物は純粋に、沖縄郷土料理ではないにも関わらず、
堂々たる沖縄の代表食のひとつであり、
その「沖縄」の一部である離島も沖縄であるがゆえに
なんとなく「タコス」と「タコライス」をお店でだしちゃったりしているが
それはなぜか「常識」だからというある意味曖昧な、沖縄だからという無意識に一部支えられたものであり、
またもちろん「タコス」も「タコライス」も沖縄や東京、
内地での「メキシコ料理店」の堂々たるメニューでもあるという、
何重にもややこしい、だからこそ魅力的な食べ物であるからだ。
これが、ソーキ、三枚肉、とかだったらそこまでややこしい話にはならないだろう。
ある意味曖昧さといかがわしさと猥雑さと見かけ以上の器の大きさを持っている日常食。
だからこそオモシロイ。

おそらく沖縄本島内の「ゾーンタコス」のタコス&タコライスたちはまったくもって地元に密着して、
愛されている食文化であるからして、これからもその高い、ワイルドなレベルを保っていくはずに違いない。
問題なのは、沖縄本島であれば、国際通り周辺であるとか、
新開発の繁華街、離島、八重山におけるソレである。
手を抜こうと思えばいくらでも。
しかし実はいくらでも魅力的なものにそれを昇華することも可能なはずだ。

●来た!タコタンヌードル!
なんつーややこしいことを考えてる間に、来た!
問題の謎のメニュー、タコタンヌードルだ!
さて、このタコタンヌードル。何かとひとことでいえば、タコスラーメンライスである。
と言うと余計わかりにくいかもしれない。
つまりラーメンライスにタコスの皮と具が載っちゃってしまっていると。
いや、やっぱり違う。
ラーメンではなく沖縄そばだ。しかしスープはラーメンぽい。
そして麺の上にはタコスの具がのり、なぜかどんぶりの外周に、
ちょうど家系ラーメンで海苔をまわりに飾るように、タコスのでっかい皮がスープにぶっささっている。

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タコタンヌードル!ついに!珍種発見!
タコスと沖縄そばと雑炊がフュージョン


そしてラーメンライスばりについてくるライスは、メキシカンライス。
しかしこのメキシカンライス。それだけ食べるとほとんど味がない。
目が点になりながらも食べ進むタコス部のおれたち。
食べ進んでもひじょうに手持ちぶさたのまま残ってしまうタコスのでか皮をおもむろに取り出し、
どんぶりの汁を吸ってふにゃっている皮に具を無理やり巻き食べようとするが、
ふにゃにゃ〜んとくずれてしまう。
そのまま麺でまるめこみ無理やり口に入れる。
うーん雰囲気雰囲気とうなずきながら、更に食べ進むと店長がひとこと。

「そろそろ入れてみたらよいですヨ〜!」

って何を? そーか、メキシカンライスですね。
よし、それをいきなりどんぶりに投入。
タコタンヌードルが「タコスおじや」に変身という具合。
店長の熱意と狙いは十分わかった。そのイメージの完遂率は自分には何%かわからない。
しかし内地や島のくされタコライスたちと比べて、このチャレンジっぷりは何なのだ。大好きだ、こーいうの。

そーいうわけで「ゾーンタコス」から少し離れた、泊の地で誕生したこの二大変わり種メニュー
「ブラックライス」「タコタンヌードル」にすっかり心を奪われていた我々だが、
ここの「ライスタコス」も秀逸だった。
具は「牛」ではなく「鶏」を選択したが、都内のメキシコ料理店やタコス屋と比べても、
絶妙な少なさのライスの量と「鶏」の味付けの上品と
ジャンクの端境の味付けの後ひき感のバランスがすばらしい。
あぁこんなお店が住んでる近くにあったらねぇ。

●架空線上のタコライス
というわけでいきなりタコス界のニューウェーブにぶちあたった今回のタコス部だが、
この最初のエンカウンターがいかに貴重なものであったかは追々明らかになっっていったのであった。
このブラックライスを出すタコス屋の後は、タコス屋界の標準時刻いや標準味参照店、
グルメ的に激うまなわけでもなければもちろんまずいわけもない、
やっぱりついつい食べてしまう宜野湾キングターコスで、
通算何度目かわからない「タコライス、チーズ、野菜のせ」を頼む。
ここではただの「タコライス」を頼むと、チーズもレタスもまったく載っていないのだ。
さて「標準」タコライスを確認した後は、まだがっつり食べたことのなかった沖縄本島のメキシコ料理屋に。
もちろんタコス&タコライスもあるが、タキトス、タコスビーフ、チーズビーフビーンズ、
トルティアピザ、ボリトー、チムチョンガ、エンチラーダ、
サンタコタコス、ファヒタス、チリオムレツ、スパニッシュオムレツ、
スウィートトマトオムレツ、チリチキン、カネロニといった、
なかには内地のメキシコ料理屋でもあまりみかけないメニューも多数揃えるお店へ。
ボリトーとチムチョンガとエンチラーダを個々別々で食べながらも、
途中無理やりライスの上にそれらをつき崩して、「架空線上のタコライス」を勝手に味わう。

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チムチョンガ!


ちなみにタキトスは、同名のフィリピンのコーンスナックがあるが、
店ではもちろんこれがでてくるわけではない。
お店ででてくるタキトスとは、チムチョンガほどカリカリには揚がってはいないが、
揚げた薄めの皮にビーフが詰まったとても癖になる包みものである。
他のつけあわせできたサワークリーム、グアカモレもつけたりしながら、
これをタコス皮で包んだら食感的にぴったりくるのはどれかなーとかあれこれ言いながら次々に食べる。
結局いろんな具をわいわいと野菜、サルサ、グアカモレをつけながら挟んで食べる喜び。
これが少しインスタント化して、すぐテイクアウトも可能な奇跡のファーストフードがタコス。
そして日本特有の「なんでもどんぶりにする」という無敵のどんぶり化本能が
それを取り込んだのがタコライスなのだろうか。
タコスの兄貴分?がチムチョンガ、ケサディヤ、ファヒタス、エンチラーダ、タキトス、ナチョス、
ブリトー…たちであるならば、実はタコスはいくらでも豪華にでもなれるし、
またディップのヴァリエーションもサルサ、サワークリーム、グアカモレ(アボガド)の基本を広げさえすれば
またいくらでも贅沢になれる。
そしてその逆に、よりミニマムな方向性もありえるが、その一つの究極到達点が
他のライバル店がそのミニマルな中毒性に太刀打ちすることができていない、
タコス皮のうまさで燦然と沖縄タコス界(タコライスはなし)に別格として存在し続けるお店メキシコだろう。
そしてミニマムではないもうひとつの方向性。
それはインドカレーが日本のカレーライスになったような、無限のヴァリエーションを持つ
「日常タコス」としての方向だろう。
そしてこの中のひとつに「島タコス」を確立できるかどうかの問題も入ってくるはず。

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新種タコライス ポーク+スペシャルソース


●そしてタコスへの思いはつきない
そんなことを考えながら、ゲート通りのタコスの名店、90thHOLEを探し続けるが
やはりこのお店はなくなってしまったようだ。
セニョールターコでエンチラーダとブリトーをさらにつまみながら、やっぱりここでもタコスを食べる。
短期間にこんだけタコスを集中して食べると、意識はもうタコスの皮で包んでいる具には向かわず、
皮の違いがどんどん気になってくる。
いろんなお店のタコスを食べ比べるのって、やっぱり皮の違いがおもしろいから。
ピタパン、エキメキ、ワッフル、クレープ(ウクライナ家庭料理の蕎麦粉クレープをはやく食べたい)
好きでもある自分は、もはやこの一ヶ月で何個目のタコスかわからないタコスを食べながら、
その皮の違いに思いをはせるうち、なぜか、

ポレッキFC(トルコ)VS モモFC(モンゴル)
その勝者 VS 沖縄タコスFC(沖縄)

といった架空の食の大会「世界スパイス包み焼き選手権」の一次リーグの模様の実況中継……
といった妄想がいっきに脳内に広がってきた。
そういえばトルコ料理には、パフポレッキという、スパイシーひき肉入揚餃子があった。
これってほとんどメキシコ料理のチムチョンガだろう。
必ずヨーグルト系ソースをかけるトルコ料理だが、包みものにソースをかけるというメキシコ料理で、
ソースでヨーグルトを使えば、ターキッシュメキシカン。
それをタコスでやってしまえば通常より細かくカットした鶏ケバブをタコス皮に挟み、
ヨーグルトソースを使えばターキッシュメキシカンタコスになるだろう、それで……
とそんなことをつらつら考えると沖縄滞在ドイツ人が斜め前のテーブルで
にっこりタコスとエンチラーダを食べている……。
そうか。ドイツのシュヴァーベン地方のマウルタッシェン。
ほうれんそうとスモークハム、タマネギとベーコンなどを細かく刻んだ具の、
ドイツ版餃子ともいえる「マウルタッシェン」。
このマウルタッシェンを食べ慣れたドイツ人にタコスを作らせたら
どんな「グリーンタコス」ができあがるのか、どんな「ソーセージタコス」ができるのか。

そんなことを考えていたら沖縄タコス部の夜はあっという間にふけていったのだった。

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by webmag-b | 2006-10-26 18:11 | 05 沖縄タコス部