連載「石垣島の美味しいスパイス パナリ食堂」とは...
かつて渋谷で世界の「辺境」音楽を集めた伝説のレコード店「パリペキンレコーズ」を作り、現在は、石垣島に在住。「辺境」音楽レーベル「360°records」を主宰する 虹釜太郎(にじかまたろう)による、沖縄・石垣島発スパイシー料理生活コラム。
東京在住時代より、オリジナルの「スパイス」料理の実験を繰り返してきた虹釜が、スローライフでもなく、LOHASでもない、沖縄の島の生活を報告。
「パナリ食堂」とは彼の頭の中にある架空の食堂。そこでは、島の食材と世界のスパイスによるオリジナルメニューが、日々生まれている。この連載では、都会でしか暮らしたことのない人間が 島に移住するとどうなるのかの驚きととまどい、そして、そんな生活の中で考えた、一風変わったオリジナルスパイス料理を紹介する。
第3回  ワールドカップ パナリプレート(後編)ノックダウン
●「ワールドカップ パナリプレート」後半戦
ノックダウン方式の決勝リーグもジダンの一発レッド退場で怒涛のうちに終了したワールドカップ。
ぼくの住んでいる石垣島はいま7月末に島で開催される「南の島の星まつり」の、
7月29日午後8時30分の「全島ライトダウン」(一斉消灯)にむけて静かにもりあがっています。
ろうそくを空に飛ばす、灯ろう流し「上空版」も企画中。
無事、全島ライトダウンとなればとてもきれいな星空が見られるはずだが…。
はたして石垣島全島民の協力を得られるだろうか。

夕方からの島の親父の泡盛での盛り上がりっぷりを見る限り一抹の不安もよぎるが、
親父の協力が得られるかどうかはいくら考えても仕方ないので
気合いれて、パナリ食堂「ワールドカップ パナリプレート」後半戦。

すっかり盛り上がりも収まってしまったワールドカップですが、
われわれは出場国32ヵ国の未知の料理を少しでも期間中に口にできたのでしょうか。
もう一度振りかえってみましょう。

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石垣島風景(島に咲いていた赤い花)。


●アルゼンチン代表・血のソーセージとブエノチキン
まずアルゼンチン代表。
アルゼンチンといえば実は沖縄とも縁の深い国。沖縄本島には名物料理「ブエノチキン」もあります。
しかし以前知り合いのアルゼンチン人の音楽家に、
「ブエノスアイレスにスパイスを使ったチキン料理はあるのか?」
と訊ねたところ「??」とのことだったので、アルゼンチン本国でのブエノチキン捜査は難航中。
それはともかく、アルゼンチンには、沖縄からアルゼンチンに移民した日系一世の子供である、
アルゼンチン生まれの日系二世も活躍中。
ということは沖縄料理とアルゼンチン料理の混交も現地では進んでいたはずだが……
それは、いつかアルゼンチン生まれの日系二世さんに直接お会いする機会があった時に聞いてみようと思う。

とりあえずは今回のアルゼンチン代表。
今大会最強?との呼び声が高いまま敗退したアルゼンチンだが、
大会期間中は選手は肉をとりすぎないようにしていたという話も。
われわれとしてアルゼンチン名物料理、血のソーセージと
沖縄本島名物「ブエノチキン」をセットでかっ喰らって元気を取り戻しましょう。
ナポリにナポリタンなし、ブエノスアイレスにブエノチキンなし?かありかは現在捜査が難航中だが、
スパイシーチキン照り焼きはぶつぎりにしたものをピタパンかタコス皮に挟んで食べればとっても美味。

●ガーナ代表・魚味のガーナ春巻き
今回のアジア・アフリカ勢で唯一決勝リーグまで残ったガーナ代表。
昨年、都内で行ったアフリカスパイス部行脚で訪れた、
都内のガーナ料理専門店「ジ・ニャメ」は既に日本にはなかった。
アフリカ料理店事情通によれば既にオーナーはガーナに帰国したとのこと。
まさかドイツでガーナ料理屋台を出店する準備のために日本を離れたんじゃないでしょうねぇ。
都内アフリカンフェスティバルでも人気だったガーナ料理。
今回は、ガーナでは普通にスナックとして食べられているという、魚味のガーナ春巻きを。
具はガーナ風に魚の燻製を使いたいが、ここ石垣島で手軽にやるなら、
イラブチャーとツナとカレー粉とキャベツを炒めたものをちゃちゃっと。
魚たっぷりのスパイシー春巻きは夜食にもぴったり。

●韓国代表・カムジャタンとチジミを島風に
前回ベスト4ながら、今回は一次リーグ敗退の韓国代表は、カムジャタンとチジミを島風に。
韓国風お好み焼きチジミを、沖縄風ひらやーちとセットで、たれは通常のに加え、
シークァーサーしょうゆ味、石垣島ラー油でかっ喰らう。
今回は特に、暑さ対策で、「ヘチマのひらやーち」を食したい。
近所のスーパーには300円で、チジミともひらやーちともお好み焼きともいえない
なんともおばぁオリジナルなひらやーちが売られていて自分もスナックとしてよく食べているのだが、
これが石垣島ラー油とあわせると何枚でも食べられる。
チジミの本来のサイズ(ピザ状、パンケーキ状他)にも諸説あるが、
今回は体を冷やすヘチマをとにかくたっぷりぶちこもう。

●ブラジル代表・特製フェジョアーダ
そして、無念のブラジル代表。ブラジルで暑さ対策といえば、やっぱりフェジョアーダ。
もし今回のワールドカップのベスト4が、ブラジル、イタリア、韓国、日本というドリーム4であったなら、
「世界四大臓物料理対決」が盛り上がったのに。
しかし沖縄はあきらかに臓物料理圏だが、日本全体となるとちと無理があるだろうか…。
フェジョアーダでカリオカ豆と煮込む臓物は、ここでは、最近沖縄の高校生が開発したという、
脂肪部分が少ないといわれるスペシャルな豚の臓物を使ってみたい。
沖縄発の「豚」ブランドはいろいろあるがついに高校生までが開発とはさすが沖縄。
しかし石垣島ではやっぱり豚より石垣牛が盛り上がってます。
美味しいのはいいけどやはり高価な石垣牛だけに、
しっぽのところとかの石垣牛の切り落としを特売してくれれば今回の特製フェジョアーダにぶちこみたい。
ちなみに石垣島の公設市場の肉売り場では、「石垣牛のすじ肉」は在庫さえあれば比較的安価に入手可能。
パパイヤとじっくり炒めたり、大根入りのカレーとあわせても美味しいです
(その際は欧風カレーブイヨンなどは使わず、昆布だしで思い切って和風にすればより美味)。
しかし、しっぽまわりは売られてはいない。

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夜の公設市場(島野菜&果物売り場と子供)。


●スペイン代表・31個のオリジナルピンチョス
そして今回こそは優勝だ!と盛り上がった史上最強スペインイレブンはまたも決勝リーグ早々に敗退。
事前にスタメンを発表したスペイン代表監督。
最後まで隠した、サンダーバードのお人形そっくりのフランス代表監督。
世界中のリーガ・エスパニョーラのファンはまたもがっくし!
そんなスペイン代表は、自国以外の出場国31ヵ国の料理を研究しつくした31個の
オリジナルピンチョスの緊急試作が急務。
そして31個のピンチョスの付け合せのイベリコ豚はスーチカとあわせてサンドにして頂きましょう。
実際のところ、スペイン人以外のリーガ・エスパニョーラの選手がスペイン食文化に触れて、
スペイン以外の国で「ピンチョス専門店」をオープンしているかどうかは知りませんが、
実際にあったら面白そう。取材費は………出ないだろーな。

●コスタリカ代表・エンバナーダ(パパイヤと石垣牛挽肉バージョン)
サポーターの楽しい感じがさすが! だったコスタリカ代表。コスタリカといえば、エンパナーダ。
ぼくが10代の時から夢想している「世界餃子選手権」にもぜひ出場してほしい、包み焼き料理。
2年前に沖縄本島の巨大スーパーで買い物していたら出口すぐのところになぜかエンパナーダの屋台があって、
そこでエンパナーダを作りまくるオジサンに話をきくと、
期間限定で沖縄のいろんなところで出店しているらしい。
作り方は親戚に教わったという。なんとも愛情たっぷりなエンパナーダで
都内のオサレなお店のエンパナーダや、地中海料理屋さんの洗練された包み焼き系とは無縁の手作り感で、
オジサンの愛情が伝わってくる味。その時一緒に食べた友人のシマンチュも納得の味でした。
あれから何回か沖縄本島の巨大スーパーを訪れるももう見かけないが、
今でもエンパナーダ作り続けているんだろーなー。
ホレッ試食シテゴランッとわたされたあの味はいまも忘れられない。
パナリ風に行くなら、パパイヤと石垣牛挽肉バージョンのエンパナーダを
いつもよりチリ多めのソースで食べてみたい。コロナビールとインカコーラと一緒に。
今日はルートビアは飲まない。

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石垣島の青パパイア→石垣牛すじちゃんぷるーで使っても美味。


●スウェーデン代表・沖縄風スモーガスボード
FCバルセロナも離れたラーション率いるスウェーデン代表。
都内にあるスウェーデンバイキング「スモーガスボード」を供する店のスモーガスボードは
夜¥6000と高いけど、お昼は約半額。
それはともかく、沖縄風にいくなら、豚のコンフィ夏野菜巻きとかも入れてみたい。
トナカイ肉と山羊肉のコンビ串も。
いずれにしても、沖縄料理、島料理の食べ放題のお店には石垣島ではまだであったことはないけど、
島料理をいくつか見繕った島料理プレートは一部の居酒屋でだしている。
スウェーデンバイキング「スモーガスボード」のような島料理ボードみたいのを夢想すればきりがないが、
ぜひ島の高校の授業の課題で取り組んでみてほしいです。
しかし今回のスウェーデン代表でもっとも納得がいかなかったのが、
通称「テコンドービッチ」ともいわれる(ほんとはあんまり言われない)、
テコンドーを習っていたというイブラヒモビッチの不発。
同じくフットボールの選手の枠を超えた動きをする福西(器械体操出身)
とのマッチアップを今回ぜひ見たかったのだが……。残念。

●ポルトガル代表・タコの唐揚げ
そして今回はふんばりまくって、世界中が応援したポルトガル代表。
四年前のインタビューでは、フットボールの話よりも、自分がいかに武士道を愛しているか
ばっかり話していた、日本料理専門店も経営していたフィーゴ。お前は勝新か!?
というわけで、ポルトガル料理です。
ポルトガル料理っていうと、もう何かっつーと、タラのコロッケばかりフィーチャーされて
もーたくさん、という方のためにも今回はタラじゃなくてタコ!
タコの唐揚げは石垣島でも大好きな人が多い。
個人的には神戸で食べたスパイシータコ唐揚げが一番好きですが、もちろん島のタコからも美味しいです。
こんなにイカ墨料理を食べている石垣島の人間たちが、タコ墨料理を食べないのは何故? 
という素朴な疑問はさておき、ヨーロッパでは忌み嫌われるタコを堂々と食す国ポルトガル。
日本対ポルトガル戦がもし実現していたら、ポルトガル産タコのカルパッチョと、
メインフードであるタラのコロッケに対抗して無理やり作ったタコのコロッケと
日本名物たこ焼き11種類の場外乱闘をしてみたかったのだが…。

●そして数日後……
とまあこうして出場国の料理たちをたっぷり島で味わいたかったのですが、
石垣島では残念ながら、ワールドカップイヤースペシャルプレートを供するお店はなかったです。
しかし今年の10月に開催される「世界うちなーんちゅ大会」に向けてもう一度島の食材の未知の可能性を、
世界各国にとんだシマンチュの知恵をも借りて、探ってみたいもんです。

ワールドカップは全然盛り上がらなかった石垣島ですが、
先日、島で開催された国際天文学会は静かに盛り上がった模様。
天文学会開催中にとある外国人が宿で広げたラップトップを偶然見ると
なにやら天文関係の画面がズラララララーとならんでおり、楽しそうに星の話を歓談する外国人たち。
そんなかれらには、日本対ブラジル戦の敗退直後の早朝に、
「ウーヤッパリアレダヨオーストラリアニカタナキャアレダッタヨネ」
とやさしい言葉をかけてもらったのだが、うーむ。やさしさがきびしく背中につきささる。

その敗戦から数日後、ぼくは公設市場の最上階にある定食屋でひとりぼーっと考えごとをしていた。
大会を通して今回いまさらながらに痛感したのは(食生活からくるハングリーさの差だよなー)
と島の定食屋でふだんはたのまない、「中身汁定食」をがっつり食べながら思ったのでした。
やっぱり、四年に一回くらい、しにまーさい(死ぬほどおいしい!の意味、
しかし正しくは「いっぺえ、まーさん」)ワールドカッププレート、食べなきゃね!


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ご存じ!石垣島ラー油@石垣島
(後ろに見えるのは石垣島ラー油使用石垣牛キーマカレー)

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本日のパナリ食堂のメニュー<期間限定メニュー>
「2006ワールドカップ パナリプレート・ノックダウン」

・「パナリ・オクトパス場外乱闘定食」
ポルトガル産タコのカルパッチョと、ルッコラ入りタコのコロッケと
ゴーヤとタコのかき揚げと日本名物たこ焼き11種類の場外乱闘プレート
・「ガーナスナック 魚味のガーナ春巻き、イラブチャー、ツナカレー味」
石垣島で食すなら、イラブチャーとツナとカレー粉とキャベツを具に。
・暑さ対策特製島ひらやーち「ヘチマのひらやーち」
   石垣島ラー油か、島しーくぁーさー醤油につけて。
   このひらやーちは、きっちり冷やしたミントティーと一緒に食すと気分爽快!!
・「石垣牛のすじ肉入フェジョアーダ」
・「イベリコ豚とスーチカのサンドイッチ」
・「トナカイ肉と山羊肉のコンビ串」
   与那国の塩と沖縄ならではのよもぎ塩につけて頂きましょう。
・「パナリ風 パパイヤと石垣牛挽肉のエンパナーダ」を
    コロナビールとインカコーラと一緒に。

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◓虹釜太郎(にじかまたろう)
「辺境」音楽レーベル「360°records」(www.360records.net)を主宰。2005年に長年住み慣れた東京を離れ、 沖縄の石垣島に移住。ライフワークの「スパイス料理実験」を石垣島の素材と世界のスパイスを使って実験中。音楽レーベル運営の他に、今年9月30日公開の映画『ストロベリーショートケイクス』(原作:魚喃キリコ、監督:矢崎仁司、出演:池脇千鶴、安藤政信他)の音楽監督など。好きなフットボール選手は、デラペニャ、エジムンド、プロドーム、フィーゴ(武士道好きのフィーゴ。彼の経営していた日本料理店はいったいどうなったのか)、エチェベリ(ボリビアの英雄)。最新テキストは、
雑誌『ユリイカ 古川日出男特集』に寄稿した「もはや人間ではないウィザードリィ・ブースター・キッズ」。
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# by webmag-b | 2006-08-04 17:57 | 03 W杯パナリ(後編)